2006年3月X日 「テロテロ坊主」

目覚めると妊娠でもしたのか、無性にしょっぱいものが食べたかったので、シャワーを浴びてサティに向かうことにした。サティは、プリングルズのでっかいのが198円で売っている。さぁ、急ごう! 速やかに塩分をとらないとお腹の子が死んでしまう。

かなり強い雨の中を、まだ見えぬ赤ん坊を想像して頑張って歩く。20分ぐらい歩いたところで、「俺の子は絶対かわいいはずだ……俺? そもそも妊娠時に欲しくなるのは酸っぱいものじゃねえか?」という疑問が沸き上がったが、雨という2度目のシャワーと共に流れ去り、プリングルズが食べたいという気持ちだけが残った。

それから30分ぐらい歩いたところで、全身、隅々までびしょぬれになったストレスを解放しようと、「雨ふざけんなあああああ!」と叫んだら、目の前におばさんが立っていてビックリ。全然気づかなかった。気配すら感じなかった。しかも犬を連れている。ずぶぬれで犬の種類は判別できない。一瞬猫かとも思った。叫ぶ俺も俺だが、土砂降りの中、犬を散歩させているおばさんもどうかと思う。イカレ具合はドローってとこだ。お互いの健闘をたたえ合い握手したいところだったが、俺が一方的に睨みつけて、第1回チキチキイカレ具合コンテストは幕を閉じた。

そんなこんなでサティに辿り着き、食料品売り場に行くと、おかしな数字が目に飛び込んでくる。

「にい、きゅう、いち……にひゃくきゅうじゅういち…291?」

プリングルズの黄色が291円? 自分の目を疑った。先月までは198円だったのに…。どうやら俺は、右から左へ字を読む時代にタイムスリップしてしまったようだ。「192円バンザーイ!」と喜んでみたものの、それだと、プリングルズがズルグンリプと表示されているはずだし、他の商品にもその傾向は見られない。とりあえず現実逃避はやめてトイレに行くことにした。膀胱が破裂寸前だ。

いつものように大便所に入る。俺のラブガンはわがままなので、立ちションができない。トイレの周辺に変な虫がいないかを確認する。以前、用を足しているときに、ゴキブリが出てきたときは死ぬかと思った。便座も上げて確認! すると、丸まったピンクのガムが便器にくっついていた。こんなところにガムをくっつける馬鹿がいるのか…そのままにして便座を下げる。さぁ、放尿タイムだ! ズボンとパンツを下げ、ゆっくり腰を下ろす。そのとき違和感を感じた。便座の位置がなんだか高い。聖水が流れ始めた。

「パンッ!」

ふとももに痛みが走る。銃声のような乾いた音が鳴り響き、火薬のにおいがトイレを支配した。やられた、何が起きたのかすぐに把握できた。丸まったピンクのガムのようなモノは、かんしゃく玉だったのだ。見たのに引っかかった自分に怒りが込み上げてくる。その間も聖水は流れ続ける。爆発音が鳴った瞬間、驚いて少し立ってしまい、聖水を場外にこぼしてしまったが、少量で済んだのは見ていたからだ。見ていなかったら、ぶちまけていたに違いない。なんという恐ろしいトラップだ。

聖水を出し切り、立ち上がる。幸いなことに身体に異常はなかった。便座を上げてみる。

「お疲れッス!」

すべてをやりきった芸人のような姿のかんしゃく玉が俺を迎えてくれた。憎たらしい。直撃を受けた便座のクッション付近は黒焦げになっている。高くつきそうだ。便座の値段が気になった。騒ぎを聞きつけた店員がやってくると面倒なので、便座を下げ、水を流し、足早にトイレを出る。



「おまえか? おまえがやったのか? それともおまえか?」

思っていたより精神的ダメージは大きかった。すべての人が敵に見える。テロに遭った人の気持ちが少しだけわかったような気がした。平和ボケしていたのかもしれない。君は俺に「危機意識を持て」ということを教えてくれたんだね。ありがとう。